【成年後見】 成年後見制度が一部改正されました~その2
成年後見制度が一部改正されました~その1では、成年被後見人宛の郵便物に関する取扱いについてご説明いたしました。本コラムでは、成年被後見人が亡くなった場合の相続財産に関する取扱いについてご説明いたします。
成年被後見人が死亡した場合、成年後見は当然に終了し、成年後見人は法定代理権等の権限を喪失するのが原則です。しかし、実際には、成年被後見人の死亡後も成年後見人が医療費の支払や公共料金の支払等の死後事務を求められ、対応に苦慮する場面がありました。
民法上、委任が終了した場合において急迫の事情があるときは、受任者等は委任者等が委任事務を処理することができるに至るまで必要な処分をしなければならないとされ(民法654条)、同条が後見において準用されていることから(民法874条)、この規定を根拠に死後事務を行うことも考えられます。しかし、「急迫の事情があるとき」「必要な処分」といった要件が付されており、成年後見人が行うことができる範囲が必ずしも明確ではありません。
そこで、今般の法改正により、個々の相続財産の保存行為、弁済期が到来した債務の弁済、火葬又は埋葬に関する契約の締結といった一定範囲の死後事務を行うことが成年後見人の権限に含まれることが明らかにされました。
即ち、改正法においては、死後事務を、
①相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
②相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済
③成年被後見人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(①②を除く)
の3つに分類し、成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、①~③の行為をすることができるとされました。もっとも、③については相続人に与える影響が大きいため、家庭裁判所の許可が必要とされました。
なお、②の対象となる債務としては、医療費や家賃の支払等が考えられます。当然のことながら債務が存在することが前提であり、また、本来、債務の弁済は相続人がするものですから、債務の存否について疑義がある場合は弁済すべきではないと考えられます。
また、②に基づき弁済する場合であっても、弁済資金を捻出するために成年被後見人名義の口座から払戻しを受ける行為は③に該当し、家庭裁判所の許可が必要とされているので注意が必要です。
なお、上記改正により死後事務を行うことができるのは成年後見人のみであり、保佐人・補助人は含まれないとされていることにも注意が必要です。保佐人・補助人は特定の法律行為について同意権、取消権、代理権を与えられているに過ぎないので、保佐人・補助人に死後事務に関する権限を与えると、保佐人・補助人の権限が拡大することになりかねず相当でないからとされています。