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当事者の住所・氏名等を秘匿する制度について

2023-03-13

令和4年5月18日に民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し、当事者等がDVや犯罪の被害者等である場合に、その住所・氏名等の情報を相手方に秘匿したまま民事訴訟手続を進めることができる秘匿制度が創設されました。民事訴訟手続については、国民がより利用しやすいものにするために総合的な見直しが行われておりますが、氏名・住所等の秘匿制度は令和5年2月20日から施行されています。

具体的には、申立人等は、裁判所に対して、相手方にも秘匿してほしい住所・氏名等を秘匿事項届出書面に記載した上で、秘匿決定の申立てをします。そして、申立人等の住所・氏名等の全部又は一部が当事者に知られることによって当該申立人等が社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがあることにつき疎明があった場合には、裁判所は住所・氏名等の全部又は一部を秘匿する旨の決定をすることができます(民事訴訟法133条1項)。

秘匿決定がされると、訴状等には、住所・氏名を記載せずに裁判所が定める事項(代替事項)を記載すればよいことになります。また、秘匿対象者以外の者は秘匿事項届出書面の閲覧等をすることができなくなります。

制度の概要については、法務省のウェブサイトでも紹介されております。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00316.html

 

成年年齢が18歳に引き下げへ

2022-04-04

民法改正に伴い、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられました。現在、18、19歳の方は、4月1日から新成人となります。

18歳になることにより、親権者の同意のない契約の締結、10年有効のパスポートの取得、公認会計士、司法書士、医師免許等の国家資格の取得等が可能になります。また、これに伴い、結婚できる年齢が男女ともに18歳からとなりました。
他方、飲酒・喫煙や競馬の馬券、競輪・オートレース・競艇の投票券の購入等は、従前どおり20歳にならないとできません。これは、健康被害への懸念や、ギャンブル依存症対策等の観点から従来の年齢を維持するものです。

成年に達すると自らの意思で契約をすることができるようになりますが、未成年者が親権者の同意を得ずに契約した場合の取消権を行使することができなくなります。これにより、成年に達したばかりの若者が契約トラブルにあう恐れがありますので、若者の消費者被害の拡大を防ぐため注意が必要です。
また、養育費については、子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので、子が成年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には養育費の支払義務が発生する場合があります。このため、成年年齢が引き下げられたからといって養育費の支払期間が当然に18歳までということにはなりません。

自然災害債務整理ガイドラインとコロナ特則

2021-03-22

新型コロナウイルスは多くの人に深刻な影響を与えており、失業や売上の減少によって住宅ローンや事業性ローン等を借りている個人・個人事業主の生活・事業再建をどのように支援していくかが重要な課題となっています。
これまで自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインは、自然災害が発生した地域でのみ運用されてきましたが(例えば東日本大震災における個人版債務整理ガイドライン)、これを新型コロナウイルスの影響を受けた個人の債務者にも適用することによって、個人再生や破産などの法的手続を経ずに債務者の債務整理を円滑に進めることが可能になりました。なお、自然災害による被災者の債務整理の問題は、雲仙普賢岳噴火や阪神・淡路大震災で二重ローン問題が顕在化したことが契機となっております。

ガイドラインのコロナ特則の対象者は、個人又は個人事業主です(法人は対象外)。対象債権者は原則として、銀行、信用金庫、リース会社、クレジット会社といった金融機関等に限られます。対象債務については、令和2年2月1日以前に負担していた債務のほか、令和2年10月30日までに新型コロナウイルスによる収入・売上減少に対応するために借り入れた債務等です。
他にも、新型コロナウイルスの影響により収入や売上等が減少したことによって、住宅ローンや事業性ローン等を弁済できない又は近い将来において弁済できないことが確実と見込まれること、弁済について誠実であり財産状況を対象債権者に適正に開示していること、対象債権者にとっても経済的な合理性があること等の要件を満たす必要があります。

手続の流れとしては、まず最も多額のローンを借りている金融機関等へガイドラインの手続着手を希望することを申し出ます。金融機関等から手続着手の同意が得られた場合、地元弁護士会などを通じて登録支援専門家(弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士等)の手続支援を受けます。手続支援に関する費用は無料です。
登録支援専門家の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて債務整理の内容を盛り込んだ案(調停条項案)を作成します。自宅を残したい場合は、民事再生手続と同じように住宅資金特別条項を盛り込みます。金融機関等の同意が得られた場合、簡易裁判所に特定調停を申し立て、調停条項が確定すれば債務整理成立となります。

民事執行法の改正~債権回収における新たな運用

2020-10-30

強制執行をする場合、債権者が債務者の財産を探すことが前提となりますが、債務者の財産調査については、平成15年の民事執行法改正により、裁判所において債務者に財産状況を陳述させるという財産開示手続が導入されておりました。しかし、申立権者が限定されていたり罰則が弱いなどの理由から十分に活用されておりませんでした。そこで今般の民事執行法改正により財産開示手続が拡充され、罰則も強化されました。財産開示手続に違反した場合の罰則としては、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっております。改正前の罰則は30万円以下の過料のみでしたが、懲役刑が加わったので債務者に与える心理的影響は少なくないと思われます。

とはいえ、依然として債務者が財産開示手続に応じないことも想定されるので、債務者の有する不動産、給与、預貯金、振替社債等につき、これらの情報を保有する第三者(登記所、金融機関、市区町村等)から情報を取得することができるようになりました。不動産については所在地や家屋番号等、給与については勤務先の情報、預貯金については口座の情報や金額、振替社債については上場株式・国債等の銘柄や数等が開示の対象となります。ただし、不動産については登記所の情報管理体制に整備を要するため、現状ではまだ情報提供は開始されておりません(令和3年5月16日までに開始予定)。

もっとも、第三者に対する情報取得の申立てをする際には、強制執行をしても完全な弁済を受けられないこと等を疎明する必要があったり、不動産や給与については財産開示手続を事前に実施することが要件とされているなど、無条件で情報提供を受けられるわけではありません。勤務先の情報を得る場合は、債権者の債権の内容が養育費請求権等一部の債権に限られています。
第三者から情報を得て債務者の財産が見つかったとしても、債権回収のためには改めて債権執行の申立てをして対象財産を差押える必要があります。費用もかかることですので、詳しくは弁護士と相談しながら進めていくことをお勧めします。

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