自然災害債務整理ガイドラインとコロナ特則

2021-03-22

新型コロナウイルスは多くの人に深刻な影響を与えており、失業や売上の減少によって住宅ローンや事業性ローン等を借りている個人・個人事業主の生活・事業再建をどのように支援していくかが重要な課題となっています。
これまで自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインは、自然災害が発生した地域でのみ運用されてきましたが(例えば東日本大震災における個人版債務整理ガイドライン)、これを新型コロナウイルスの影響を受けた個人の債務者にも適用することによって、個人再生や破産などの法的手続を経ずに債務者の債務整理を円滑に進めることが可能になりました。なお、自然災害による被災者の債務整理の問題は、雲仙普賢岳噴火や阪神・淡路大震災で二重ローン問題が顕在化したことが契機となっております。

ガイドラインのコロナ特則の対象者は、個人又は個人事業主です(法人は対象外)。対象債権者は原則として、銀行、信用金庫、リース会社、クレジット会社といった金融機関等に限られます。対象債務については、令和2年2月1日以前に負担していた債務のほか、令和2年10月30日までに新型コロナウイルスによる収入・売上減少に対応するために借り入れた債務等です。
他にも、新型コロナウイルスの影響により収入や売上等が減少したことによって、住宅ローンや事業性ローン等を弁済できない又は近い将来において弁済できないことが確実と見込まれること、弁済について誠実であり財産状況を対象債権者に適正に開示していること、対象債権者にとっても経済的な合理性があること等の要件を満たす必要があります。

手続の流れとしては、まず最も多額のローンを借りている金融機関等へガイドラインの手続着手を希望することを申し出ます。金融機関等から手続着手の同意が得られた場合、地元弁護士会などを通じて登録支援専門家(弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士等)の手続支援を受けます。手続支援に関する費用は無料です。
登録支援専門家の支援を受けながら、金融機関等との協議を通じて債務整理の内容を盛り込んだ案(調停条項案)を作成します。自宅を残したい場合は、民事再生手続と同じように住宅資金特別条項を盛り込みます。金融機関等の同意が得られた場合、簡易裁判所に特定調停を申し立て、調停条項が確定すれば債務整理成立となります。

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