民事執行法の改正~債権回収における新たな運用

2020-10-30

強制執行をする場合、債権者が債務者の財産を探すことが前提となりますが、債務者の財産調査については、平成15年の民事執行法改正により、裁判所において債務者に財産状況を陳述させるという財産開示手続が導入されておりました。しかし、申立権者が限定されていたり罰則が弱いなどの理由から十分に活用されておりませんでした。そこで今般の民事執行法改正により財産開示手続が拡充され、罰則も強化されました。財産開示手続に違反した場合の罰則としては、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっております。改正前の罰則は30万円以下の過料のみでしたが、懲役刑が加わったので債務者に与える心理的影響は少なくないと思われます。

とはいえ、依然として債務者が財産開示手続に応じないことも想定されるので、債務者の有する不動産、給与、預貯金、振替社債等につき、これらの情報を保有する第三者(登記所、金融機関、市区町村等)から情報を取得することができるようになりました。不動産については所在地や家屋番号等、給与については勤務先の情報、預貯金については口座の情報や金額、振替社債については上場株式・国債等の銘柄や数等が開示の対象となります。ただし、不動産については登記所の情報管理体制に整備を要するため、現状ではまだ情報提供は開始されておりません(令和3年5月16日までに開始予定)。

もっとも、第三者に対する情報取得の申立てをする際には、強制執行をしても完全な弁済を受けられないこと等を疎明する必要があったり、不動産や給与については財産開示手続を事前に実施することが要件とされているなど、無条件で情報提供を受けられるわけではありません。勤務先の情報を得る場合は、債権者の債権の内容が養育費請求権等一部の債権に限られています。
第三者から情報を得て債務者の財産が見つかったとしても、債権回収のためには改めて債権執行の申立てをして対象財産を差押える必要があります。費用もかかることですので、詳しくは弁護士と相談しながら進めていくことをお勧めします。

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