推定相続人の廃除について

2017-08-01

相続において一定の相続人には遺留分といって最低限遺産を保持できる権利が認められており、遺言によってもこれを奪うことはできないとされています。しかし他方、民法は、推定相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、推定相続人に著しい非行があったときは、一定の手続を取ることにより相続人としての資格を失わせることができる(遺留分も認められない)と定めています。これを「推定相続人の廃除」といいます。

廃除をするための要件ですが、まず、①廃除される者は遺留分を有する推定相続人であることが必要です。遺留分を有しないのは兄弟姉妹のみですが、兄弟姉妹に遺産を相続させたくないのであれば、その旨の遺言を書いておけば足ります。そこで、民法上、廃除をするためには遺留分を有することが要件となっています。

次に、②廃除される者に廃除事由があることが必要です。廃除事由は、被相続人に対する虐待又は重大な侮辱があることや、推定相続人に著しい非行があることです。
ここでいう虐待又は重大な侮辱とは、被相続人に対して精神的苦痛を与え、又は名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該推定相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものとされています。その程度については、被相続人の主観的な感情、意思に左右されることなく、客観的に判断されます。
具体的には、
◇大学に入って遊びを覚え、賭け事、バー通い、女遊びなどで学業がおろそかになり大学を中退し、その後は就職しても長続きせず、親から生活費の送金を受けるも無心を繰り返し、これに応じないときは暴力を振るった
◇父の金員を無断で費消したり、通信販売による物品購入代金を父に負担させたりしながら、これを注意されると暴力を振るい、また、勤務先の会社の使い込み金の弁償等も父に負担させ、さらにサラ金業者から多額の借金をしながら、父の家を出て所在不明になり、何の連絡も取っていない
といった行為が裁判例において廃除事由ありとされています。

廃除の手続についてですが、生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言による方法があります。遺言で廃除を求める場合、相続が開始して遺言が効力を生じた後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てをすることになります。つまり、遺言執行者を決めておく必要があります。

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