遺骨は誰のもの?
遺骨の所有権について考えたことはありますでしょうか。
かつて判例は、遺骨は相続財産として相続人の所有に帰すると解していました。しかし、遺骨は被相続人の所有の客体ではないことから、相続人の所有とするという結論には多くの批判がありました。
学説では、遺骨は相続の対象にならず、慣行上の喪主に帰属するという説もありました。しかし、喪主は葬儀・埋葬のために必要な管理処分権を有するにすぎず、それ以上の権利帰属を認めることについても批判がありました。他方、遺骨は祭祀目的のものとして祭祀財産に準じて扱い、祭祀主宰者に取得を認めるとする学説もありました。
その後、判例は、遺骨は祭祀主宰者に帰属するものと認めるに至ったため、現在の実務においては、遺骨は祭祀主宰者に帰属するとされるようになりました。したがって、祭祀主宰者として遺骨を埋蔵し管理している者は、親族から遺骨の引渡を要求されても、これに応じるか拒絶するかを自由に決めることができます。
なお、祭祀主宰者は、祖先の家系図、位牌、仏壇、墳墓などの祭祀財産を承継します。祭祀主宰者は、まず被相続人の指定により定まります。指定の方法については特に定めがなく、口頭・書面、明示・黙示を問わず、生前行為、遺言のいずれでも良いとされています。被指定者の資格についても制限はありません。
被相続人の指定がなければ、被相続人の出身地などの慣習に従って定められます。祭祀主宰者について被相続人の指定がなく、慣習も明確でない場合は、家庭裁判所の審判で決定されます。
祭祀財産は、戦前は家督相続人が独占的に承継していました。戦後、家督相続が廃止され遺産相続に一本化された後も、なお一般の相続原則の例外として祭祀主宰者が承継するとされた趣旨は、従来からの慣行や国民感情に配慮したこと、祭祀財産は分割相続になじまないことにあるとされています。