相続欠格とは?

2019-05-18

相続欠格についてQ&Aの形式でまとめましたので、ご覧ください。

(質問)
私(相談者)も年を取ってきましたので、遺言書を書いてみました。私には子どもが2人いるのですが(長男、長女。夫は亡くなっています)、私の面倒をよく見てくれている長女に多めに財産を与える内容にしてあります。遺言書は自宅の仏壇に保管してありますが、長女には遺言書を書いたことを伝えていません。
ただ、もし私が死んだ後、長男が長女より先に遺言書を見つけて開封してしまった場合、遺言書の内容に不満を抱いて遺言書を捨ててしまうかもしれません。長男はせっかちなところがあるので、遺言書を見つけたら開封してしまいそうな気がするのです。
もし長男が私の遺言書を捨ててしまった場合、長男にはペナルティが発生するのでしょうか。長男に財産を与えたくないわけではないのですが、私の遺言書の内容が実現しないのも困ります。

(回答)
遺言書を捨ててしまった場合、その相続人は相続資格を失うので、ご相談者の財産を相続することができなくなります。これを「相続欠格」といいます。
民法では、相続欠格に該当する事由として、遺言書を破棄・隠匿した場合のほか、故意に被相続人を殺害する、詐欺又は強迫によって被相続人に遺言書を書かせる、遺言書を偽造する、といった場合を規定しています。遺言書を勝手に開封しても相続欠格とはなりません(ただし過料の制裁はあります)。相続欠格の制度は、相続資格を法律上当然に失わせるものであり、制裁としての側面が強いといえます。ただ、相続欠格事由があるか否かが争いになったときは、訴訟手続において欠格事由の有無を裁判所に判断してもらう必要があります。

このように法律上は相続欠格制度により長男にペナルティが発生することになっています。しかし、ご相談者が亡くなった後、長男が誰にも知られずにこっそり遺言書を捨ててしまった場合、そもそも長女はご相談者が遺言書を書いていたこと自体認識していないので、ご相談者の遺言があったことを前提に動くことができません。そうすると、せっかく遺言書を書いたのに長女にご相談者の気持ちが伝わらない結果に終わることになります。
また、相続欠格によって相続資格を失うのは、当該相続人だけであり、その子は代襲相続人として被相続人の財産を受け取る権利があります。ですので、仮に長男が遺言書を捨てたことを明らかにしたとしても、長男にお子様がいる場合(ご相談者の孫です)、そのお子様が相続することになります。長女としては勝手に遺言書を捨てるような長男の子にも相続させたくないと考えるでしょうが、長男の子に遺産が行くのであれば、釈然としない気持ちが残るでしょう。

ですので、改めて公正証書遺言を作成することをお勧めします。公正証書にしておけば、原本が公証役場に保管されるので、長男が遺言書を捨ててしまうことはありません。公正証書作成にあたっては費用がかかるのと、関係資料を収集する手間はかかりますが、お子様たちのトラブルの芽を摘んでおくのは親としての責務だと思います。

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