【相続】 預貯金債権も遺産分割の対象となりました

2016-12-20

ニュースなどで取り上げられておりましたが、昨日最高裁判所において遺産分割における預貯金債権の取扱いに関する決定が出されました。

(全文)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

結論としては、普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるというものです(裁判官全員一致の意見)。

本事件では普通預金、ゆうちょ銀行の通常貯金及び定期貯金が対象となっていたことから、最高裁は、それぞれの預貯金債権について分けて検討しており、それぞれ以下の理由が挙げられています。

1.普通預金債権、通常貯金債権

・普通預金契約及び通常貯金契約は、一旦契約を締結して口座を開設すると、以後預金者がいつでも自由に預入れや払戻しをすることができる継続的取引契約であり、口座に入金が行われるたびにその額についての消費寄託契約が成立するが、その結果発生した預貯金債権は、口座の既存の預貯金債権と合算され、1個の預貯金債権として扱われるものであること
・このように、普通預金債権、通常貯金債権は、いずれも1個の債権として同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものであり、この理は預金者が死亡した場合においても異ならないこと
・これらの債権は口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものとして存在し、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解されること
・相続開始時における各共同相続人の法定相続分相当額を算定することはできるが、預貯金契約が終了していない以上、その額は観念的なものにすぎないこと
・預貯金債権が相続開始時の残高に基づいて当然に相続分に応じて分割され、その後口座に入金が行われるたびに各共同相続人に分割されて帰属した既存の残高に、入金額を相続分に応じて分割した額を合算した預貯金債権が成立すると解することは、預貯金契約の当事者に煩雑な計算を強いるものであり、その合理的意思に反すること

2.定期貯金債権

・定期貯金の前身である定期郵便貯金につき、郵便貯金法は、一定の預入期間を定め、その期間内には払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するものと定め、原則として預入期間が経過した後でなければ貯金を払い戻すことができず、例外的に預入期間内に貯金を払い戻すことができる場合には一部払戻しの取扱いをしないものと定めていること
・郵政民営化法の施行により、日本郵政公社は解散し、その行っていた銀行業務は株式会社ゆうちょ銀行に承継され、ゆうちょ銀行は、通常貯金、定額貯金等のほかに定期貯金を受け入れているところ、その基本的内容が定期郵便貯金と異なるものであることはうかがわれないから、定期貯金についても、定期郵便貯金と同様の趣旨で、契約上その分割払戻しが制限されているものと解されること
・この制限は、単なる特約ではなく定期貯金契約の要素というべきであること
・定期貯金債権が相続により分割されると解すると、それに応じた利子を含めた債権額の計算が必要になる事態を生じかねず、定期貯金に係る事務の定型化、簡素化を図るという趣旨に反すること
・仮に定期貯金債権が相続により分割されると解したとしても、同債権には上記の制限がある以上、共同相続人は共同して全額の払戻しを求めざるを得ず、単独でこれを行使する余地はないので、そのように解する意義は乏しいこと

このように、最高裁は各預貯金債権の内容及び性質から結論を導いています。この結論を導いた背景として、一般的には遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましいこと、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在するところ、預貯金が現金に近いものとして想起されること、といった観点も踏まえられているようです。

今回の最高裁決定は、今までの最高裁判例(預金債権は当然に分割されるとの立場)と銀行実務の取扱い(相続人全員の同意がなければ払戻に応じない)との齟齬を修正するものとして大きな意味があるといえるでしょう。ただ、裁判官の意見において、被相続人の生前に扶養を受けていた相続人が預貯金を払い戻すことができず生活に困窮する、被相続人の入院費用や相続税の支払に窮するといった事態が生ずるおそれがあること等が指摘されています(この点に対しては、補足意見において、遺産分割の審判事件を本案とする保全処分として、例えば、特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために、相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分等を活用することが考えられる、とされています)。

最高裁判例が出たばかりですので、今後の実務の動向等に注目していきたいと思います。

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