Archive for the ‘相続’ Category

相続人の調査について

2021-04-02

遺産分割を進めるに当たって、まず最初に確定すべきは誰が相続人となるかです。当然のことではありますが、当事者となる者が全員揃って遺産分割協議をしなければ、遺産分割は有効とならないからです。

相続人として誰がいるかは戸籍を調査すれば判明するのが通常です。また、被相続人が亡くなるまでの間の親戚付き合い等から相続人として誰がいるかは大方判明しているのが通常です。しかし、被相続人に子がおらず、兄弟が相続人となる場合は二次相続が発生していることも多く、その場合は戸籍を辿っていくのが容易でない場合も出てきます。時として相続人が何十人になることもありますので、兄弟相続の場合は相続人の調査に注意が必要となります。

また、当事者が自ら戸籍の調査をしようとしても戸籍謄本を請求できる範囲には限りがあります。ですので、自ら戸籍を調査するのが難しい場合は、職務上戸籍謄本の請求ができる弁護士に調査を依頼するのが良いでしょう。弁護士であれば戸籍調査後の遺産分割手続も依頼することができますし、もし相続人間で対立が生じたような場合にも代理人として対応することが可能となります。遺産分割において生じる可能性のある法的問題に対応できるのが弁護士の強みです。

相続人については、その範囲に争いが生じる場合もあります。例えば、被相続人と養子縁組をした事実がないのに、戸籍上は養子縁組した子が記載されているような場合もあります。相続人の調査をして、その範囲に問題が生じたときは、訴訟等の手続により相続人の範囲を確定させた上で遺産分割をすることになります。専門的な話になりますので、お気軽に弊所までご相談ください。

自筆証書遺言書の保管制度が始まりました

2020-07-10

本日から法務局における自筆証書遺言書の保管制度が始まりました。自筆証書遺言は自宅で保管されることが多いですが(仏壇や金庫にしまっておくなど)、遺言書が紛失するおそれがあったり、相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんが行われるおそれがあったりと、相続をめぐる紛争が生じるおそれがありました。これらの問題の原因の一つに、自筆証書遺言を確実に保管し、相続人がその存在を把握することができる仕組みが確立されていないことがあるとの指摘がなされていました。
そこで、このような遺言書の紛失、隠匿等を可能な限り回避し、相続をめぐる紛争を防止するための制度として、公的機関(法務局)で遺言書を保管する制度が創設されました。

遺言書の保管の申請先は、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局になります。遺言書は法務省令で定める様式に従って作成したものであることが必要です。また、申請に際しては所定の手数料がかかります。
遺言書の変造等を防止する観点から遺言者は自ら法務局に出頭する必要があり、代理人や使者による申請は認められません。ですので、病気等のため遺言者自らが法務局に出頭できない場合は、公証人に出張を求めて、公正証書遺言の作成を検討することになるでしょう。

遺言書保管の申請がされた遺言書の原本は法務局で保管されます。また、遺言書の画像情報等が電子データでも保管されます。遺言書の保管が開始された後でも、遺言者は遺言書の保管の申請を撤回することができます。ただし、遺言書の保管申請の撤回をしたとしても、遺言自体を撤回したことにはなりません。

遺言書の保管制度により保管された遺言書については、遺言者の死亡後、検認手続が不要になるため、自筆証書遺言の利用を促進する効果が期待されます。もっとも、法務局では遺言の内容については審査しませんので、遺言書の内容・目的等に応じて公正証書遺言を選択することも検討する必要があるといえるでしょう。

 

特別寄与料の請求について

2019-11-11

例えば、親が亡くなり子どもが相続人の場合、子どもの配偶者は親の相続人ではないので、親の遺産を相続する権利がないのが原則です。しかし、子どもの配偶者などが被相続人の療養看護に努めるなどの貢献を行った場合には一定の財産を分け与えることが被相続人の推定的意思に合致する場合も多いと考えられます。そこで、改正相続法は、相続人ではない被相続人の親族が、相続人に対して、その貢献に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができるとする制度を新設し、相続人でない者が遺産の分配を受けることができないという不公平を解消させることとしました。この規定は令和元年7月1日から施行されていますが、施行日前に開始した相続については改正前の法律が適用されます。
特別寄与料を請求できる者は被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)です。内縁の配偶者や同性のパートナーなどは含まれません。

特別寄与料を請求するためには、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたと認められることが必要です。請求者が被相続人から介護の対価を受け取っていた場合は「無償」という要件を満たさないので、特別寄与料は請求できません。
そして、権利行使期間についてですが、当事者間で協議が調わない場合、①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は②相続開始の時から1年以内に家庭裁判所に調停・審判の申立をする必要があります。この期間制限は割と早いので注意が必要です。

家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。算定の目安については従来の寄与分における算定方法が参考になりますが、寄与分における療養看護型の場合、被相続人が要介護度2以上の状態にあることが一つの目安になるとされています。そして、相続人は介護の専門家ではないこと等の事情を考慮し、裁量割合として通常は0.5~0.8程度を乗じて減額されています。特別寄与料の場合も、基本的にはこの裁量割合の幅の範囲で個別具体的な事情を考慮して算定されるものと思われます。

相続法改正~遺産分割前でも預金を引き出せるようになります

2019-06-29

従前から金融機関は二重払いのリスクを回避するため、被相続人の預貯金の払戻に相続人全員の署名押印を求めておりました。また、近時の最高裁判決により、相続された預貯金は遺産分割の対象となり、遺産分割が終了するまでの間は相続人全員の同意がない限り、相続人単独での払戻はできないとされました。しかし、被相続人の遺産なのにそこから被相続人のために葬儀費用を出すことすらできず、相続人は不便を強いられていました。
そこで、相続人の資金需要に対応できるよう、今般の相続法改正により2つの制度が設けられました。一つは、預貯金の一定割合については家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにしたこと、もう一つは、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和したこと、です。ですが、後者の仮処分についてはわざわざ家庭裁判所に申立てをしなければならないなど手間がかかります。ですので、本ページでは前者の制度についてご説明します。

預貯金の一定割合の支払を受けられる額については、相続開始時の預貯金額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額と定められ、同額について各相続人が単独で払戻請求をすることが可能になりました。ただし、同一の金融機関に対する権利行使は、その金融機関に複数の口座があったとしても150万円が限度とされました。これは裁判所の判断を経ずに払戻を認めるものであるため上限を設ける必要があること、上限を設けないと他の共同相続人の利益を害する程度が大きくなることなどが理由とされています。

本制度の施行は令和元年7月1日からです。同日前に相続が発生している場合でも、同日以後であれば本制度の利用が可能です。
金融機関に提出する書類については特に定められていませんが、被相続人が死亡したことや相続人の範囲、法定相続分が分かる資料がないと金融機関が判断できませんので、それらが分かる戸籍謄本は最低限必要になるでしょう。あとは請求者の印鑑登録証明書なども必要になるのではないかと思われます。金融機関もまだ手続に慣れていないと思いますので、必要書類などを事前に問い合わせるなどして余裕をもって行動するようにしましょう。

文京区・千代田区の遺言・相続 法律相談 小野貴朗総合法律事務所

相続欠格とは?

2019-05-18

相続欠格についてQ&Aの形式でまとめましたので、ご覧ください。

(質問)
私(相談者)も年を取ってきましたので、遺言書を書いてみました。私には子どもが2人いるのですが(長男、長女。夫は亡くなっています)、私の面倒をよく見てくれている長女に多めに財産を与える内容にしてあります。遺言書は自宅の仏壇に保管してありますが、長女には遺言書を書いたことを伝えていません。
ただ、もし私が死んだ後、長男が長女より先に遺言書を見つけて開封してしまった場合、遺言書の内容に不満を抱いて遺言書を捨ててしまうかもしれません。長男はせっかちなところがあるので、遺言書を見つけたら開封してしまいそうな気がするのです。
もし長男が私の遺言書を捨ててしまった場合、長男にはペナルティが発生するのでしょうか。長男に財産を与えたくないわけではないのですが、私の遺言書の内容が実現しないのも困ります。

(回答)
遺言書を捨ててしまった場合、その相続人は相続資格を失うので、ご相談者の財産を相続することができなくなります。これを「相続欠格」といいます。
民法では、相続欠格に該当する事由として、遺言書を破棄・隠匿した場合のほか、故意に被相続人を殺害する、詐欺又は強迫によって被相続人に遺言書を書かせる、遺言書を偽造する、といった場合を規定しています。遺言書を勝手に開封しても相続欠格とはなりません(ただし過料の制裁はあります)。相続欠格の制度は、相続資格を法律上当然に失わせるものであり、制裁としての側面が強いといえます。ただ、相続欠格事由があるか否かが争いになったときは、訴訟手続において欠格事由の有無を裁判所に判断してもらう必要があります。

このように法律上は相続欠格制度により長男にペナルティが発生することになっています。しかし、ご相談者が亡くなった後、長男が誰にも知られずにこっそり遺言書を捨ててしまった場合、そもそも長女はご相談者が遺言書を書いていたこと自体認識していないので、ご相談者の遺言があったことを前提に動くことができません。そうすると、せっかく遺言書を書いたのに長女にご相談者の気持ちが伝わらない結果に終わることになります。
また、相続欠格によって相続資格を失うのは、当該相続人だけであり、その子は代襲相続人として被相続人の財産を受け取る権利があります。ですので、仮に長男が遺言書を捨てたことを明らかにしたとしても、長男にお子様がいる場合(ご相談者の孫です)、そのお子様が相続することになります。長女としては勝手に遺言書を捨てるような長男の子にも相続させたくないと考えるでしょうが、長男の子に遺産が行くのであれば、釈然としない気持ちが残るでしょう。

ですので、改めて公正証書遺言を作成することをお勧めします。公正証書にしておけば、原本が公証役場に保管されるので、長男が遺言書を捨ててしまうことはありません。公正証書作成にあたっては費用がかかるのと、関係資料を収集する手間はかかりますが、お子様たちのトラブルの芽を摘んでおくのは親としての責務だと思います。

被相続人の預金を使い込まれていた場合の対応について

2018-11-01

相続の案件においては、認知症だった被相続人の預金が一部の相続人によって生前に引き出されている場合がよくあります。

被相続人の生前に引き出された預金については、大きく分けて、①被相続人の了解の下に預金が払い戻されるなどして特定の相続人が贈与を受けたという特別受益の問題として主張される場合と、②被相続人の預金が無断で払い戻されて特定の相続人が取得したという、不法行為もしくは不当利得の問題として主張される場合の2つに分けられます。
しかし、被相続人が認知症だった場合、被相続人の了解なく引き出されていることが多く、預金の使途を巡って②の不法行為もしくは不当利得の問題になることが多いです。

不法行為もしくは不当利得の問題となる場合、これは民事訴訟事件であって遺産分割事件とは異なります。ですので、仮に遺産分割調停を申し立てたとしても、引き出された預金を相手方が遺産と認めて話し合いがまとまらない限り遺産分割事件では解決できず、民事訴訟を提起することになります。民事訴訟を提起する場合、大きく分けて、①相手方が預金を引き出したこと、②被相続人の病状、について立証する必要があります。

①については、金融機関の窓口で引き出されていたのであれば払戻請求書の写しの開示を受け、筆跡を確かめます。払戻請求書の筆跡と相手方の筆跡が同じであれば、相手方が引き出していたことの有力な証拠となるでしょう。カードで引き出されていたとしても、相手方が被相続人の通帳やカードを預かっていたり、他に被相続人の預金を引き出せる立場の人がいない場合には、相手方が引き出したという推認が働くといえるでしょう。

②については、介護保険における主治医の意見書や認定調査票などの証拠が市役所にありますので、それを取り寄せることになります。ただ、それだけでは立証として不十分なこともありますので、入院していた病院や通所介護を受けていた施設からカルテや介護記録なども取り寄せる必要が出てきます。これらの書類は5年の保存期間経過後は破棄されてしまうのが一般的ですので(介護記録は2年という場合もあります)、早めに証拠収集を行う必要があるでしょう。

証拠を揃えて訴訟提起したとしても、相手方からは、引き出した預金は被相続人の生活費や医療費等に充てたという反論が出ることも予想されます。しかし、引き出された金額が多額であれば、全て被相続人の生活費等に充てられたとは考えにくいでしょう。仮に生活費等に充てたものがあるとしても、まずはその領収証等の資料の提示を求めていくことになります。

寄与分について

2018-04-20

共同相続人中に、身分関係や親族関係から通常期待される以上に被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき、その寄与者の相続分に寄与分額が加算されることがあります。この特別の寄与を評価して算出した割合や金額のことを寄与分といいます。
寄与分が認められるということは法定相続分を修正することになりますので、修正するに足りるほどの特別の寄与があったという事情を立証することが必要です。また、寄与行為が財産上の効果と結びつかない場合、すなわち、精神的な援助、協力が存在するだけでは寄与分は認められません。あくまでも被相続人の財産の維持又は増加という財産上の効果があったことが必要となります。

寄与分が問題になる類型としては、療養看護型、家業従事型、金銭等出資型、財産管理型、扶養型など様々な類型がありますが、例えば療養看護型の場合、以下の要件を満たすことが必要とされています。

① 療養看護の必要性
療養看護を必要とする病状であったこと、及び近親者による療養看護を必要としていたことが必要です。高齢というだけでは療養看護が必要な状態だったとはいえません。また、入院や施設に入所していた場合、その期間は原則として寄与分が認められません。

② 特別な貢献
被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の寄与であることが必要です。同居やそれに伴う家事分担だけでは特別の寄与とはいえません。

③ 無償性
無報酬又はそれに近い状態でなされていることが必要です。逆に、無報酬又はそれに近い状態であっても、被相続人の資産や収入で生活していた場合は認められないことがあります。

④ 継続性
療養看護が相当期間に及んでいることが必要であり、少なくとも1年以上を必要としている場合が多いようです。

⑤ 専従性
療養看護の内容が片手間なものではなく、かなりの負担を要するものであることが必要です。仕事のかたわら通って介護した場合などは親族としての協力の範囲であって特別の寄与とはいえません。

⑥ 財産の維持又は増加との因果関係
療養看護により、職業看護人に支払うべき報酬等の看護費用の出費を免れたという結果が必要です。

これらの要件を見てみますと、療養看護型において寄与分が認められるハードルは低くないといえますが、個別具体的な事案によって判断が異なってくることも考えられます。上記の類型によっても異なってくるので、詳細はご相談ください。

遺骨は誰のもの?

2017-09-14

遺骨の所有権について考えたことはありますでしょうか。

かつて判例は、遺骨は相続財産として相続人の所有に帰すると解していました。しかし、遺骨は被相続人の所有の客体ではないことから、相続人の所有とするという結論には多くの批判がありました。
学説では、遺骨は相続の対象にならず、慣行上の喪主に帰属するという説もありました。しかし、喪主は葬儀・埋葬のために必要な管理処分権を有するにすぎず、それ以上の権利帰属を認めることについても批判がありました。他方、遺骨は祭祀目的のものとして祭祀財産に準じて扱い、祭祀主宰者に取得を認めるとする学説もありました。

その後、判例は、遺骨は祭祀主宰者に帰属するものと認めるに至ったため、現在の実務においては、遺骨は祭祀主宰者に帰属するとされるようになりました。したがって、祭祀主宰者として遺骨を埋蔵し管理している者は、親族から遺骨の引渡を要求されても、これに応じるか拒絶するかを自由に決めることができます。

なお、祭祀主宰者は、祖先の家系図、位牌、仏壇、墳墓などの祭祀財産を承継します。祭祀主宰者は、まず被相続人の指定により定まります。指定の方法については特に定めがなく、口頭・書面、明示・黙示を問わず、生前行為、遺言のいずれでも良いとされています。被指定者の資格についても制限はありません。
被相続人の指定がなければ、被相続人の出身地などの慣習に従って定められます。祭祀主宰者について被相続人の指定がなく、慣習も明確でない場合は、家庭裁判所の審判で決定されます。

祭祀財産は、戦前は家督相続人が独占的に承継していました。戦後、家督相続が廃止され遺産相続に一本化された後も、なお一般の相続原則の例外として祭祀主宰者が承継するとされた趣旨は、従来からの慣行や国民感情に配慮したこと、祭祀財産は分割相続になじまないことにあるとされています。

死後事務委任契約について

2017-09-01

自分が亡くなった後の諸々の手続は誰がしてくれるのでしょうか。想定される手続としては、遺体の引取、死亡届の提出、葬儀、埋葬、関係機関への死亡の届出、医療費の支払、世話になった人への謝礼、年忌法要等が考えられます。通常は家族が無償で行ってくれるでしょうが、例えば、独身の人、結婚しているが子どもがない人、親族と疎遠な人、親族が信用できない人の場合はどうしたら良いのでしょうか。一人暮らしで自宅を賃借していた場合、誰が大家さんに物件の引渡をしてくれるのでしょうか。最近ではSNSやパソコンの後処理を気にされる方も増えています。

このような場合に登場するのが死後事務委任契約です。これは、委任者が第三者に対して、亡くなった後の諸手続についての代理権を付与して死後事務を委任するものです。死後事務を依頼する方法としては遺言も考えられますが、葬儀や埋葬方法等について遺言執行者に法的な強制を及ぼすことはできません。負担付き遺贈という形で依頼することも考えられますが、受遺者が放棄して死後事務処理の負担を免れることができてしまうという難点があります。そこで、死後事務委任契約という方法が提唱されています。

ただ、死後事務委任契約も、委任者の相続人との関係で法律上の問題点があるため、委任者の死亡後に相続人と受任者との間でトラブルになる可能性もあります。契約内容を吟味する必要があるので、詳細は弁護士にお問い合わせください。

推定相続人の廃除について

2017-08-01

相続において一定の相続人には遺留分といって最低限遺産を保持できる権利が認められており、遺言によってもこれを奪うことはできないとされています。しかし他方、民法は、推定相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、推定相続人に著しい非行があったときは、一定の手続を取ることにより相続人としての資格を失わせることができる(遺留分も認められない)と定めています。これを「推定相続人の廃除」といいます。

廃除をするための要件ですが、まず、①廃除される者は遺留分を有する推定相続人であることが必要です。遺留分を有しないのは兄弟姉妹のみですが、兄弟姉妹に遺産を相続させたくないのであれば、その旨の遺言を書いておけば足ります。そこで、民法上、廃除をするためには遺留分を有することが要件となっています。

次に、②廃除される者に廃除事由があることが必要です。廃除事由は、被相続人に対する虐待又は重大な侮辱があることや、推定相続人に著しい非行があることです。
ここでいう虐待又は重大な侮辱とは、被相続人に対して精神的苦痛を与え、又は名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該推定相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものとされています。その程度については、被相続人の主観的な感情、意思に左右されることなく、客観的に判断されます。
具体的には、
◇大学に入って遊びを覚え、賭け事、バー通い、女遊びなどで学業がおろそかになり大学を中退し、その後は就職しても長続きせず、親から生活費の送金を受けるも無心を繰り返し、これに応じないときは暴力を振るった
◇父の金員を無断で費消したり、通信販売による物品購入代金を父に負担させたりしながら、これを注意されると暴力を振るい、また、勤務先の会社の使い込み金の弁償等も父に負担させ、さらにサラ金業者から多額の借金をしながら、父の家を出て所在不明になり、何の連絡も取っていない
といった行為が裁判例において廃除事由ありとされています。

廃除の手続についてですが、生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言による方法があります。遺言で廃除を求める場合、相続が開始して遺言が効力を生じた後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てをすることになります。つまり、遺言執行者を決めておく必要があります。

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